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APIRO:SOARプラットフォーム向け自動セキュリティツールAPI推薦フレームワーク

APIROはSOARプラットフォーム向けの学習ベース自動セキュリティツールAPI推薦フレームワークで、データ不均質性と意味的変動の課題に対処し、Top-1精度91.9%を達成。
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1 はじめに

セキュリティオペレーションセンター(SOC)では、サイバーセキュリティインシデントの管理のために、セキュリティオーケストレーション・自動化・対応(SOAR)プラットフォームの採用が増加しています。これらのプラットフォームはAPIを通じて多様なセキュリティツールを統合しますが、データの不均質性、意味的変動、利用可能なAPIの膨大な数により、手動でのAPI選択は大きな課題となっています。

APIROは、特定のインシデント対応タスクに対して最も関連性の高いセキュリティツールAPIを推薦する自動学習ベースのフレームワークを通じて、これらの課題に対処します。本フレームワークは91.9%のTop-1精度を実証し、既存の手法を大幅に上回る性能を示しています。

91.9%

Top-1精度

26.93%

ベースラインからの改善

3

評価対象セキュリティツール数

36

拡張技術数

2 APIROフレームワークアーキテクチャ

APIROフレームワークは、SOAR環境におけるセキュリティツールAPI推薦の課題に対処するために設計された3つの主要コンポーネントで構成されています。

2.1 データ拡張モジュール

データ不足を緩和するため、APIROは同義語置換、逆翻訳、文脈埋め込みを含む36のデータ拡張技術を採用しています。このモジュールは、意味を保持しながら合成トレーニングデータを生成することで、API記述を強化します。

2.2 API埋め込みモデル

APIROは、セキュリティ特化コーパスで学習された専門的な単語埋め込みモデルを利用します。このモデルは以下の埋め込み目的関数を使用して、API機能間の意味的関係を捕捉します:

$\min_{\theta} \sum_{(w,c) \in D} -\log \sigma(v_c \cdot v_w) - \sum_{(w,c') \in D'} \log \sigma(-v_{c'} \cdot v_w)$

ここで、$v_w$と$v_c$はそれぞれ単語ベクトルと文脈ベクトルを表し、$D$は正のトレーニングペア、$D'$は負のサンプルを示します。

2.3 CNN分類

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、埋め込みされたAPI記述を処理し、特定のタスクに対して上位3つの関連APIを予測します。CNNアーキテクチャには、APIドキュメント内のn-gramパターンを捕捉するための複数のフィルタサイズ(2,3,4グラム)が含まれています。

3 実験結果

APIROは、広範なAPIドキュメントを有する3つのセキュリティツール(Malware Information Sharing Platform (MISP)、Limacharlie EDR、Phantom SOARプラットフォーム)を使用して評価されました。

3.1 性能評価指標

本フレームワークは、複数の評価指標で顕著な性能を達成しました:

  • Top-1精度:91.9%
  • Top-2精度:ベースラインから23.03%改善
  • Top-3精度:ベースラインから20.87%改善
  • 平均相互順位(MRR):23.7%改善

3.2 ベースラインとの比較

APIROは、全ての指標において最先端のベースライン手法を大幅に上回りました。この性能改善は、セキュリティAPIドキュメントにおける意味的変動を扱うためのデータ拡張と専門的埋め込みアプローチの有効性を示しています。

性能比較チャート

実験結果は、APIROの精度指標がベースラインアプローチと比較して示されています。棒グラフによる可視化は、Top-1、Top-2、Top-3精度測定において一貫した優位性を示し、Top-1精度で最も顕著な改善(26.93%改善)が見られました。

4 技術分析

核心的洞察

APIROは、手動でエラーが発生しやすいプロセスを、インテリジェントでデータ駆動型の推薦に置き換えることで、SOCチームがセキュリティツールAPIとどのように相互作用するかを根本的に変革します。本フレームワークの真の突破口は、セキュリティドキュメントの混沌とした現実に対する実用的なアプローチにあります - 混沌を標準化しようとするのではなく、効果的にナビゲートすることを学習します。

論理的フロー

アーキテクチャは洗練された3段階パイプラインに従います:まず、36の技術(CycleGANのデータ拡張戦略を彷彿とさせる)を通じて限られたトレーニングデータを積極的に拡張します;次に、セキュリティ用語のニュアンスを理解するドメイン特化の埋め込みを構築します;第三に、局所的および大域的な意味的パターンを捕捉するためにマルチスケールCNNフィルタを採用します。これは単なる別のML応用ではなく、特定の高リスクドメイン向けに構築された専用システムです。

強みと欠点

91.9%のTop-1精度は印象的ですが、テストされた3つのツールを超えた実世界での一般化については懐疑的です。広範なデータ拡張への依存は、導入の拡張性を制限する可能性のある根本的なデータ不足問題を示唆しています。しかし、ベースラインからの26.93%の改善は、単なる漸進的調整ではなく、真の技術的革新を示しています。

実用的な洞察

セキュリティベンダーは、APIROのような機能をSOARプラットフォームに統合することを直ちに検討すべきです。本フレームワークは、現代のSOCを悩ませるAPI統合ボトルネックに対処するための明確なロードマップを提供します。組織は、手動で脆弱な統合方法を継続するのではなく、SOARベンダーがこれらのAI駆動アプローチを採用するよう圧力をかけるべきです。

分析フレームワーク例

インシデント対応タスクを考えます:「IPアドレス192.168.1.100からの不審なネットワークトラフィックを調査」

APIRO処理ワークフロー:

  1. タスク記述の前処理とトークン化
  2. セキュリティ特化単語ベクトルを使用した埋め込み検索
  3. マルチスケールCNN特徴抽出
  4. 利用可能なセキュリティツールAPIに対する類似性スコアリング
  5. 信頼度スコア付き上位3つのAPI推薦

出力:[MISP: search_events, Limacharlie: get_connections, Phantom: ip_reputation_check]

5 将来の応用

APIROの方法論は、セキュリティツール推薦を超えて重要な可能性を秘めています:

  • エンタープライズAPIディスカバリ:一般的なエンタープライズAPIエコシステムへの拡張による、より良いサービス発見と統合の実現
  • クロスプラットフォームセキュリティ自動化:クラウドプロバイダーとセキュリティベンダーを跨ぐ自動化されたセキュリティワークフローの実現
  • API標準化:標準化されたセキュリティAPI仕様の開発への情報提供
  • ゼロトラストアーキテクチャ:インテリジェントなAPI選択を通じた動的セキュリティポリシー施行の支援

将来の研究方向には、新しいセキュリティツールへの転移学習の組み込み、少数ショット学習能力の開発、推薦の透明性のための説明可能なAIの統合が含まれます。

6 参考文献

  1. Zhu, J.Y., et al. "Unpaired Image-to-Image Translation using Cycle-Consistent Adversarial Networks." ICCV 2017.
  2. MISP Project. "Malware Information Sharing Platform." https://www.misp-project.org/
  3. Limacharlie. "Endpoint Detection and Response." https://limacharlie.io/
  4. Saxe, J., et al. "Deep Neural Network Based Malware Detection Using Two Dimensional Binary Program Features." IEEE S&P 2015.
  5. MITRE ATT&CK. "Enterprise Matrix." https://attack.mitre.org/
  6. Phantom. "Security Orchestration, Automation and Response Platform." https://www.phantom.us/
  7. Rapid7. "SOAR Platform for Threat Hunting." Technical Documentation, 2021.